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人物紹介:順天堂大学医学部附属 順天堂医院 医学博士 久末伸一
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順天堂大学医学部附属 順天堂医院で「メンズヘルス外来」、また、メンズヘルスクリニック東京にて男性更年期(LOH症候群)に取り組んでおられ、メンタル、性機能あらゆる分野で悩む男性患者さんのために日々向き合っておられます。

メンズヘルスクリニック東京
http://www.menshealth-tokyo.com/
順天堂大学医学部附属 順天堂医院
http://www.juntendo.ac.jp/hospital/

女性が知りたいパートナーのED事情 vol.1

二松対談vol.1画像1EDアンバサダーを自称する私は、メディアで「ED」という文字を見かけると勝手に反応して、目がそちらに釘付けになってしまいます。
新聞や男性週刊誌などではED特集が盛んに組まれていますね。皆さんも、一度くらいはそういった記事を読まれたことがあるかもしれませんが、そのなかで、久末伸一先生によるEDの記事を目にされた方も多いのではないでしょうか?

私は記事等で久末先生をお見かけするたびに、
「そうだ!現代のED事情について最新情報をうかがおう!そして、私は現代女性達の性の動向についていろいろお伝えしよう」
と考えていました。

そしてこの度、メンズへルスクリニック東京さんにご協力をいただいて、私と久末先生による『夢のED対談』が実現したのです!

とはいえ、「EDで本当に辛いのはパートナーである女性です」と言いきる私は、女性の視点でED、セックスレス、不妊について久末先生に質問を投げかけました。
そのときの先生のお話は本当に為になることばかりで、EDによるセックスレスで悩むご夫婦必見の内容でしたので、是非ご覧いただきたいと思います。

第1章 若い層と中高年層どちらのED患者さんが多い?- 第1話

二松対談vol.1画像2三松真由美(以下、三松):さて、さっそくEDについてなのですが、私の運営する夫婦仲相談所には、20代30代でおそらくEDと見受けられるかたからのセックスレス相談が増えています。以前はEDといえば、中高年おじさまの症状という認識でしたが、久末先生のところにいらっしゃる患者さんはいかがですか?
ED治療患者さんの世代が若くなっているのか、それともやはり40代以上の方がたくさんいらっしゃるのか。

久末伸一医師(以下、久末):人口動態でいいますと、若い方でEDを訴えられる方というか、治療を希望される方というのはやっぱり増えているんじゃないかと思うんですよね。
日本における有病率は、40代が20%、50代が40%、60代が60%と高くはなりますが、若い人は増えて来ています。

三松:そうですよね。私もまったく同感です。
奥様は、「夫がまだ30代前半なのにEDなんてことがあるんでしょうか」と青い顔で訴えられます。
「心因性のEDのかたが多いので年齢に関係ないと思います」とお答えしています。

久末:そうですか。
もう一つですね最近多いのは、実は40代の方で、お子さんを希望されているご夫婦。妊活と絡んで、不妊治療をするうえで自然妊娠を希望するという意味で、そのスタート地点としての勃起治療というのを希望されてくる方というのが、かなり多いんじゃないかなと思うんですよね。

二松対談vol.1画像3三松:ええ。わかります。妊娠したい女性の方達は、排卵期を逃せません。真剣そのものです。
よって、性行為に必要なリラックス精神、エロチック精神を忘れがちになります。悪気はなく責め立ててしまう。夫を。
男性側にうかがうと「今夜して。受精するために。今夜が勝負よ」という強要が感じられ、引いてしまいますと。よって充分に勃起しないということに。

久末:そうですね。
30代~40代の方で、なかなか奥様との性交で勃起ができなくて。今のままだと子どもを持てないので何とかしてほしいと、いう方が最近は非常に多いような気がしますね。

三松:なるほど。その30代、40代の方で、奥さんもお若いのに勃起ができない、それはやはりED、ということなのですね。つまり心因性ED?

久末:ええ。ただその30代40代といっても奥様のほうが妊娠限界の迫った30代後半だったりされる方が多いもので、基本的には妊娠自体もなかなか厳しいところがあるんですけれども。
そういった方の勃起障害の特徴としては、もちろん器質性の勃起障害という可能性もありますが、かなりのファクターで心因性の勃起障害というのが入っておられる方が多いんですよ。

三松:はい。

久末:それはどうしてかって言いますと、結局、男性の勃起のしやすさっていうのは、やっぱりリラックスした状態で副交感神経が優位になるような、そういった環境のほうが勃起がしやすいワケです。
妊娠させなきゃいけないとかプレッシャーがあると、勃起しにくい。

三松:はい、パートナーに性行為を迫られる男性方に共通の特徴ですね。

久末:そうなんですよ。性交しなきゃいけない、あとは膣内で射精しなきゃいけないとか、そういった不妊治療受けられているという時点でかなり精神的に性交中に追い詰められるということが多いんですね。

三松:なるほど。勃起→挿入はできても、勃起維持して射精しなくてはならない。かなり高いハードルになります。途中で萎えるのはEDということになりますものね。

久末:はい。その緊張が高まるとですね、やはり勃起のほうもしづらくなるので、それで勃起の治療をっていうことになるんですね。
ですから特徴としてはマスターベーションがうまくいくのに、いざ「妊娠のための性交」をしようとすると、膣内射精が出来ないですとか、そういった膣内での射精障害というのも勃起障害に含まれると思いますね。

三松:ということは最近はお子さんがほしいがゆえに、奥さんと一生懸命子づくりに励んでいるんだけれども、なかなか勃起しないとういう方々が増えてきたということですか?先生の印象としては。

久末:はい。印象としてですけれどもね。
たぶん今ですね不妊治療をされる方自体も増えてきているんですが、高齢出産というのが多くなってきていまして、それが生んだ二次的な現象としてのED患者さんの増加ということなんじゃないでしょうか。

三松:なるほどなるほど。では妊活は別にするとします。ホントに奥さんと愛ある性交渉をするのになかなか勃起ができないことで、「じゃあバイアグラください」「俺はシアリスがいいなあ」っていうような、従来のED患者さんのほうはどうなのですか?年代的に下がってきているとか、上がってきているとか?

二松対談vol.1画像4久末:PDE5阻害薬、つまりバイアグラですとかレビトラ、シアリスを求める患者さんの年齢層というのは、僕は上がってきているというふうに感じています。
つまり昔はですね、70代の方っていうのは、自分はもう終わったんだ枯れたんだということで、セックスを前向きに考えられていなかったんです。
それが最近ですと実は治療を受けたいんだということで来られる方も多いです。

三松:つまり、枯れ感が薄れている。そうですよね。アンチエイジング時代ですもの。週刊現代や週刊ポストさんら、50~60代熟年層がよく読む男性誌ではこぞってセックス特集が組まれます。私は毎週のように取材を受けます(笑)

久末:そう、中高年層はセックスに前向きになっています。
最近はBPH(前立腺肥大症)の治療薬で「ザルティア」というお薬も出ているんですね。

三松:ほうほう。「ザルティア」。それはどういったお薬ですか。

久末:これは前立腺肥大症に対するお薬なんですけれども、実は成分がシアリスの有効成分と同じなんですね。タダラフィルというんですけれども。そのタダラフィルの5mgに相当するのが、「ザルティア」なんです。

三松:なんと、シアリスと同じ成分。というと、勃起が復活するじゃあありませんか!

久末:そうなんです。タダラフィルは普通、10mg・20mgを勃起治療として使うんですけれども、「ザルティア」は5mgですから非常に低用量ですし、用法としても毎日飲むタイプのものなんです。これが前立腺肥大の症状に効くということが分かりまして、今年新しく登場しました。

三松:いやはや、患者さんにとっては前立腺肥大が改善し、ついでに勃起機能も回復という朗報になりますね。

久末:はい。これがまだ4月に出たばかりです。こちらのお薬を処方すると、患者さんとしては肥大症の症状があって勃起のほうは忘れていたんだけれども、この薬を飲むようになってから朝立ちや性交時勃起が可能になっていらっしゃって、そういった副次的な効果で非常に喜んでおられる方が今増えているんですね。

三松:そうなんですか。

二松対談vol.1画像5久末:はい。ですので僕の印象としては、70代80代でもう自分は終わったと思われている方がPDE5阻害薬を飲んでの性交っていうのがだんだん浸透してきているんじゃないかなと思うんですね。
かつてPDE5阻害薬が登場した時期は、70代80代の方はそんなのもっての他だ!というような風潮がありましたから。
ですが今だんだんシフトしてきているような印象がありますね。

三松:なるほどですね。中高年、シニア世代が性に対して積極的になってきた時代ですね。

久末:今、三松先生に言われて初めて気が付いたんですけれども、そういった年齢という意味でいうと、上にも下にも広がってきているということなんでしょうねきっと。

三松:なるほど。その前立腺肥大症っていうのはお年を召した方の症状ということでよろしいんですか?

久末:はい。だいだい50歳くらいから出てくるものなんですけれども、前立腺の肥大というのはまだ詳しいメカニズムは分かっていないのですが、簡単に言いますと女性の乳房、乳腺と同じようなところがありまして。
個人差が非常に大きくて、年齢ですごく大きく肥大する人もいれば、それほど肥大しない人もいるんですね。ただ皆さんその症状が出る・出ないということに関しては、大きさはあまり関係ないんですよ。
前立腺がすごく大きくて症状が出ない方もいれば、小さいけれど症状が強い方もいるんですね。
で、先ほど申しました「ザルティア」というお薬はですね、前立腺のサイズがそれほど大きくなくて、でも症状が強い、という人におすすめなんじゃないかと言われています。

三松:なるほど。でそれをデイリーで飲まれていると、勃起のほうも調子がいいので喜ばれていると。

久末:そうなんです。

三松:前立腺の病気の事など、私たち女性には想像もつきません。
未知なる分野です。パートナーが50歳を過ぎる頃、前立腺の
心配もしてあげるとよいのですね。

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