スキノレンクリーム(ニキビ・美白治療薬:アゼライン酸)
スキノレンクリーム(Skinoren Cream)は、有効成分アゼライン酸20%を配合した外用薬で、ニキビ(尋常性ざ瘡)の治療および色素沈着(シミ・肝斑)の改善に用いられる先発医薬品です。
アゼライン酸は天然由来の成分(穀物や酵母に含まれるジカルボン酸)であり、抗菌作用、角質溶解作用、抗炎症作用、メラニン生成抑制作用の4つの薬理作用を併せ持ちます。レチノイドや過酸化ベンゾイルと比較して皮膚刺激が穏やかであり、敏感肌の方にも使いやすい外用薬といえます。
欧州では1990年代からニキビ治療の標準的な外用薬として広く使用されてきました。日本では2024年12月時点でアゼライン酸外用薬は医薬品として未承認ですが、海外では豊富な臨床使用実績を持つ薬剤です。
なお、本ページは薬剤師が執筆しております。
Atsu薬剤師資格をもち、現在でも調剤薬局で勤務しています。また医療雑誌の編集にも携わっております。
※本ページの初稿は薬剤師が執筆しております。メドノア編集部が必要に応じて加筆・修正を行いますが、その際も情報の正確性と信頼性を損なわないよう細心の注意を払っています。
スキノレンクリームの概要
- アゼライン酸20%を配合した外用薬(先発医薬品)
- ニキビ治療と色素沈着(シミ・肝斑)の改善に使用
- 抗菌・角質溶解・抗炎症・メラニン抑制の4つの作用を併せ持つ
- 1本30g入り
- バイエル(Intendis社)が開発
スキノレンクリームはもともとバイエル(Bayer AG)の皮膚科部門であるIntendis GmbHが開発・製造していた製品です。バイエルはドイツ・レバークーゼンに本社を置く世界的な製薬・ライフサイエンス企業として知られています。現在、スキノレンブランドの販売権は一部の市場でLEO Pharma A/Sに移管されています。
| 商品名 | スキノレンクリーム(Skinoren Cream) |
|---|---|
| 内容量 | 30g(1本) |
| 効果・効能 | ・尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療 ・酒さ(丘疹膿疱型)の治療 ・色素沈着(シミ・肝斑)の改善 |
| 有効成分 | アゼライン酸(Azelaic Acid)20% |
| 副作用 | ・刺激感、ヒリヒリ感 ・乾燥、かゆみ ・赤み(まれ) |
| 形状・剤形 | クリーム(外用) |
| ブランド | バイエル(Bayer AG)/ Intendis |
Atsuスキノレンクリームは、欧州でニキビおよび酒さの治療薬として承認されている先発医薬品です。
日本ではアゼライン酸外用薬は医薬品として承認されていないため、保険診療で処方されることはありません。
一方、美容皮膚科領域では、ニキビ治療やシミ・肝斑の改善を目的として自費診療で処方されるケースが増えています。
アゼライン酸の大きな特徴は、レチノイド(アダパレンやトレチノイン)や過酸化ベンゾイルと比較して皮膚刺激が穏やかな点にあります。
そのため、敏感肌の方やレチノイドの刺激に耐えられなかった方の代替治療として選択されることがあるでしょう。
また、妊娠中の安全性に関しては、旧FDAの妊娠カテゴリー分類ではカテゴリーBに該当していました。
2015年以降、FDAは妊娠カテゴリー(A/B/C/D/X)を廃止し、新しいラベリングルール(PLLR:Pregnancy and Lactation Labeling Rule)へ移行しています。
現行の添付文書では、動物実験において催奇形性は認められていないものの、妊婦を対象とした十分かつ適切に管理された臨床試験は実施されていない旨が記載されています。
妊娠中の使用を検討する場合は、必ず産科医または主治医に相談してください。
スキノレンクリームはこんな方におすすめ
- ニキビ(赤ニキビ・白ニキビ)に悩んでいる方
- シミや肝斑などの色素沈着を改善したい方
- レチノイドや過酸化ベンゾイルで肌荒れがひどかった方
- 敏感肌でも使いやすいニキビ治療薬を探している方
- ジェネリック(アジダームクリーム)ではなく先発品を使用したい方
スキノレンクリームの有効成分について
スキノレンクリームには、ジカルボン酸の一種であるアゼライン酸(Azelaic Acid)が20%の濃度で配合されています。アゼライン酸は穀物(小麦、ライ麦など)に含まれるほか、皮膚常在真菌であるマラセチア属(Malassezia spp.)が産生する天然由来の有機酸です。
ニキビに対しては、アクネ菌(Cutibacterium acnes)に対する抗菌作用と、毛穴周囲の角質が異常に厚くなる(毛漏斗部の角化異常)のを防ぐ角質溶解作用により、毛穴の詰まりを改善してニキビの発生を抑制します。
色素沈着に対しては、メラニン合成の律速酵素であるチロシナーゼの活性を阻害することで、メラニン生成を抑制し、シミや肝斑の改善に寄与します。
Atsuアゼライン酸のメラニン抑制作用は、ハイドロキノンと同様にチロシナーゼを阻害するメカニズムに基づいています。
ただし、両者には重要な違いがあります。
アゼライン酸は異常に活性化したメラノサイトに対して選択的に作用するとされており、正常なメラノサイトにはほとんど影響を与えません。
そのため、ハイドロキノンの長期使用で懸念される白斑(脱色素斑)のリスクが低いと考えられています。
抗炎症作用についても複数のメカニズムが報告されています。
具体的には、活性酸素種(ROS)の産生抑制に加え、カリクレイン-キニン系カスケードの阻害、さらにカテリシジン(LL-37)の産生抑制を介した抗炎症作用が示唆されています。
とりわけカテリシジンの産生抑制は、酒さ(丘疹膿疱型)の病態に深く関与するメカニズムとして注目されています。
なお、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、アゼライン酸は面皰(コメド)に対する治療選択肢として推奨度C1(選択肢の一つとして推奨する)に位置づけられています。
エビデンスは蓄積されつつありますが、国内での保険適用がないことが推奨度に影響していると考えられるでしょう。
スキノレンクリームの効果・効能
- 尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療:炎症性ニキビ(赤ニキビ)および非炎症性ニキビ(白ニキビ・黒ニキビ)の改善
- 酒さ(丘疹膿疱型)の治療:顔の赤み・丘疹・膿疱の改善
- 色素沈着の改善:シミ(老人性色素斑)、肝斑、炎症後色素沈着
海外の臨床試験では、アゼライン酸20%クリームを12週間使用した群において、ニキビ(炎症性・非炎症性)の数が約60%減少したと報告されています。効果は使用開始後4週間程度で現れ始めるとされています。
肝斑に対しては、ハイドロキノン4%クリームと同等の改善効果を示したとの比較試験の結果が報告されています。
スキノレンクリームの使用方法
スキノレンクリームは1日2回(朝・夜)、洗顔後に患部へ薄く塗布します。
| 使用回数 | 1日2回(朝・夜) |
|---|---|
| 塗布タイミング | 洗顔後、肌が乾いた状態で |
| 塗布量 | 適量を患部に薄く塗布 |
| 効果発現の目安 | 使用開始後4週間程度 |
使用上の注意
- 使用開始初期(1から2週間)は軽い刺激感やヒリヒリ感が生じることがあります(継続使用で軽減する傾向があります)
- 目、口の周り、粘膜への塗布は避けてください
- 朝の使用時には日焼け止めを併用してください
- 塗布後は手をよく洗ってください
Atsuスキノレンクリームはレチノイドや過酸化ベンゾイルと比較して皮膚刺激が穏やかですが、使い始めの1から2週間は軽い刺激感(ヒリヒリ感やほてり)を感じることがあります。
これらの症状は一過性のものであり、多くの場合、継続使用するうちに軽減していきます。
刺激が気になる場合は、最初の数日間は1日1回(夜のみ)の使用から開始し、肌が慣れてきたら1日2回に増やすことをおすすめします。
また、アゼライン酸はレチノイドのように光感受性を高める作用はないため、朝の使用も問題ありません。
ただし、色素沈着の改善を目的として使用する場合は、紫外線によるメラニン生成を防ぐために日焼け止めの併用が重要です。
スキノレンクリームの警告・禁忌・副作用
禁忌(使用できない方)
- アゼライン酸に対して過敏症の既往歴がある方
副作用
スキノレンクリームで起こる可能性のある主な副作用は以下のとおりです。
- 刺激感、ヒリヒリ感、ほてり
- 乾燥、かゆみ
- 赤み(紅斑)
- 皮むけ(まれ)
これらの副作用はレチノイドや過酸化ベンゾイルと比較して軽度であり、使用開始後1から2週間で軽減する傾向があります。症状が強い場合は使用頻度を減らすか、一時的に使用を中止してください。
Atsuアゼライン酸の副作用プロファイルは、他のニキビ治療外用薬と比較して穏やかです。
レチノイド(アダパレン等)で問題となる光感受性の増大がなく、過酸化ベンゾイルのような衣類・寝具の漂白作用もないため、日常生活への影響が少ない薬剤といえるでしょう。
妊娠中の安全性については、旧FDAの妊娠カテゴリー分類でカテゴリーBに該当していました。
ただし、前述のとおりFDAは2015年に当該分類を廃止しており、現行の添付文書では「動物実験で催奇形性は認められていないが、妊婦における十分な臨床データはない」旨が記載されています。
妊娠中・授乳中に使用を検討する場合は、必ず主治医に相談するようにしてください。
なお、アゼライン酸による重篤な副作用(アナフィラキシーや重度の皮膚障害など)の報告は極めてまれです。
全身への吸収量がごくわずかであることも、安全性の高さを裏付ける要因の一つと考えられます。
スキノレンクリームの注意事項
- 目や口の周り、粘膜には塗布しないでください
- 朝に使用する場合は日焼け止めを併用してください
- 妊娠中・授乳中の方は使用前に医師にご相談ください
- 効果が実感できるまでに4週間程度かかることがあります
- 高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所で保管してください
- こどもの手の届かない場所に保管してください
スキノレンクリームのよくある質問
スキノレンクリームとアジダームクリームの違いは何ですか?
スキノレンクリームはアゼライン酸20%の先発医薬品であり、アジダームクリームは同じ有効成分を含むジェネリック医薬品です。
有効成分の種類と濃度(20%)は同じであるため、効果は同等と考えられています。先発品にこだわりがある方にはスキノレンクリームが適しています。
シミや肝斑にも効果がありますか?
アゼライン酸にはメラニン合成を抑制するチロシナーゼ阻害作用があり、シミや肝斑の改善に効果があるとされています。
比較臨床試験では、ハイドロキノン4%クリームと同等の美白効果が確認されています。ハイドロキノンで生じうる白斑のリスクがない点も、アゼライン酸の利点です。
妊娠中でも使用できますか?
アゼライン酸は、旧FDAの妊娠カテゴリー分類においてカテゴリーBに該当していた薬剤です。ただし、FDAは2015年にこの分類を廃止しており、現在は個別の添付文書情報に基づいて判断する形となっています。
動物実験では催奇形性は報告されていませんが、妊婦を対象とした十分な臨床試験データは存在しません。レチノイド(アダパレン等)が妊娠中は禁忌であることを考えると、妊娠中のニキビ治療における選択肢の一つにはなりえます。ただし、使用前に必ず産科医に相談するようにしてください。
効果が出るまでどのくらいかかりますか?
ニキビに対しては使用開始後4週間程度で改善の兆候が現れ始め、12週間の継続使用で最大効果が期待できます。
色素沈着(シミ・肝斑)については、改善が実感できるまでに数か月かかることがあります。効果を判断するには最低3か月の継続使用が推奨されます。
朝に使っても大丈夫ですか?
アゼライン酸はレチノイドと異なり光感受性を高める作用がないため、朝に使用しても問題ありません。
ただし、色素沈着の改善を目的とする場合は、紫外線対策として日焼け止めを併用することが重要です。
スキノレンクリームに関連する添付文書等の参考資料
スキノレンクリームの有効成分(アゼライン酸)に関する参考資料を以下に掲載します。