アリセプト(認知症治療薬:ドネペジル)
アリセプト(Aricept)は、有効成分ドネペジル塩酸塩10mgを配合したコリンエステラーゼ阻害薬で、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の治療に用いられる先発医薬品です。
脳内で神経伝達物質アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)の働きを阻害することで、低下したアセチルコリン濃度を高め、認知機能の維持・改善に寄与します。1日1回の服用で効果が持続するため、服薬管理が比較的容易な薬剤として知られています。
1996年に米国FDAで承認されて以来、世界90か国以上で使用されており、日本でも1999年の発売以降、アルツハイマー型認知症治療の第一選択薬として広く処方されてきました。2014年にはレビー小体型認知症への適応も追加されています。
なお、本ページは薬剤師が執筆しております。
Atsu薬剤師資格をもち、現在でも調剤薬局で勤務しています。また医療雑誌の編集にも携わっております。
※本ページの初稿は薬剤師が執筆しております。メドノア編集部が必要に応じて加筆・修正を行いますが、その際も情報の正確性と信頼性を損なわないよう細心の注意を払っています。
アリセプトの概要
- ドネペジル塩酸塩10mgを配合したコリンエステラーゼ阻害薬の先発医薬品
- アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状進行を抑制
- 1日1回の服用で効果が持続
- 1箱28錠入り
- エーザイが開発
アリセプトの開発元はエーザイ(Eisai Co., Ltd.)です。エーザイは東京に本社を置く日本の製薬企業で、神経科学領域やがん領域を重点領域として世界各国で医薬品を展開しています。当サイトで取り扱うアリセプトは、ファイザーのトルコ法人(Pfizer İlaçları Ltd. Şti.)が製造する正規品です。
エーザイはアリセプトの海外展開にあたり、ファイザーとの提携のもと各国で製造・販売を行っており、トルコ法人製も正規のライセンス製品にあたります。
| 商品名 | アリセプト(Aricept) |
|---|---|
| 内容量 | 28錠(1箱) |
| 効果・効能 | ・アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制 ・レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制 |
| 有効成分 | ドネペジル塩酸塩 10mg |
| 副作用 | ・食欲不振、吐き気、嘔吐 ・下痢 ・興奮、不眠 |
| 形状・剤形 | フィルムコーティング錠 |
| ブランド | エーザイ(Eisai) |
Atsuアリセプトは、エーザイ株式会社が創製したアセチルコリンエステラーゼ(AChE)選択的阻害薬です。
アルツハイマー型認知症治療薬として、1日1回投与で安定した効果を得られる点が臨床上の大きな特徴といえます。
国内承認時の臨床試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)では、ドネペジル5mg群においてADAS-Jcog(日本語版認知機能評価スケール)のスコアがプラセボ群と比較して有意な改善を示しました(アリセプト錠添付文書「臨床成績」の項参照)。
10mg群ではさらなる改善が報告されていますが、副作用の発現率も用量依存的に増加する点には注意が必要です。
ただし、アリセプトは認知症の根本的な原因(神経変性そのもの)を治療する薬剤ではなく、あくまで症状の進行を遅らせる対症療法薬であることにご留意ください。
なお、当サイトで取り扱うアリセプトは10mg錠のみとなっています。
日本国内の添付文書では、通常1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgへ増量、さらに5mgで4週間以上服用した後に10mgへ増量するとされており、10mgは最高維持用量に相当します。
アリセプトはこんな方におすすめ
- アルツハイマー型認知症と診断され、認知機能の低下を遅らせたい方
- レビー小体型認知症の症状進行を抑えたい方
- ご家族がアルツハイマー型認知症で、治療薬を確保しておきたい方
- 先発医薬品(アリセプト)を使用したい方
アリセプトの有効成分について
アリセプトには、コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル塩酸塩が10mg配合されています。ドネペジルは、脳内のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を可逆的に阻害する成分です。
アルツハイマー型認知症では、記憶や学習に関わる神経伝達物質であるアセチルコリンを産生するコリン作動性神経の変性・脱落が起こり、脳内のアセチルコリン濃度が低下しています。
ドネペジルはアセチルコリンを分解する酵素(AChE)の働きを阻害することで、シナプス間隙のアセチルコリン濃度を高め、残存するコリン作動性神経の機能を補助します。これにより、認知機能や日常生活動作(ADL)の低下の進行を遅らせる効果が期待されます。
Atsuドネペジルの薬理学的な特徴として、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)に対する高い選択性が挙げられます。
同じコリンエステラーゼ阻害薬であるリバスチグミン(イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ)がAChEとブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)の両方を阻害するのに対し、ドネペジルはAChEを選択的に阻害するため、末梢性のコリン作動性副作用が比較的少ないとされています。
また、消失半減期が約70〜80時間と非常に長いことも臨床上の利点です。
1日1回の服用で安定した血中濃度を維持でき、服薬回数の少なさは認知症の方の服薬アドヒアランス向上に直結します。
服薬管理を行う介護者の負担軽減という観点でも、この投与スケジュールは有用といえるでしょう。
なお、ガランタミン(レミニール)はAChEの阻害に加え、ニコチン性アセチルコリン受容体に対するアロステリック増強作用(APL作用)を有しており、同じコリンエステラーゼ阻害薬でも作用機序に違いがあります。
医師はこれらの薬理学的特性を踏まえ、方の状態に応じて薬剤を選択します。
アリセプトの効果・効能
- アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
- レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
アリセプトの添付文書(国内臨床試験データ)によると、アルツハイマー型認知症を対象とした臨床試験において、ドネペジル5mg群および10mg群はプラセボ群と比較してADAS-cog(認知機能評価スケール)のスコアが有意に改善したと報告されています。
認知機能の改善や維持が期待できるほか、日常生活動作(ADL)の低下を遅らせる効果も確認されています。ただし、アリセプトは認知症の根本的な原因を治療する薬ではなく、症状の進行を遅らせる対症療法薬です。
アリセプトの服用方法・使用方法
アリセプトは1日1回、水またはぬるま湯で服用します。通常は3mgから開始し、段階的に増量して最大10mgまで増量可能です。
| 項目 | アルツハイマー型認知症 | レビー小体型認知症 |
|---|---|---|
| 開始用量 | 1日1回3mg | 1日1回3mg |
| 増量スケジュール | 1から2週間後に5mgへ増量 | 1から2週間後に5mgへ増量 |
| 最大用量 | 1日1回10mg(5mgで4週間以上経過後) | 1日1回10mg(5mgで4週間以上経過後) |
| 服用タイミング | 食事の有無を問わず服用可 | 食事の有無を問わず服用可 |
使用上の注意
- 当サイトで取り扱うアリセプトは10mg錠です。すでに5mgで4週間以上服用し、医師から10mgへの増量指示を受けている方が対象となります
- 初めてドネペジルを服用する方が10mgから開始することは推奨されません(消化器系の副作用が強く出るおそれがあります)
- 毎日なるべく同じ時間帯に服用してください
- 自己判断で服用を中止しないでください(急に中止すると症状が悪化するおそれがあります)
Atsu当サイトで取り扱うアリセプトは10mg錠のみのため、すでに低用量(3mgまたは5mg)で治療を開始し、医師から10mgへの増量を指示されている方が対象となります。
日本国内のアリセプト添付文書では、通常1日1回3mgから開始し、1から2週間後に5mgへ増量するとされています。
10mgへの増量は5mgを4週間以上服用した後に、医師が効果と忍容性を判断したうえで行います。
初めてドネペジルを服用する方がいきなり10mgを服用すると、吐き気や食欲不振などの消化器系副作用が強く現れるおそれがあるため、段階的な増量が重要です。
飲み忘れに気づいた場合は、その日のうちであればできるだけ早く服用してください。
ただし、翌日に気づいた場合は飛ばして次の通常の服用時間に1回分を服用してください。
アリセプトの警告・禁忌・副作用
禁忌(服用できない方)
- ドネペジル塩酸塩またはピペリジン誘導体に対して過敏症の既往歴がある方
副作用
アリセプトで起こる可能性のある主な副作用は以下のとおりです。
- 食欲不振、吐き気、嘔吐
- 下痢
- 興奮、不眠、攻撃性
- 頭痛、めまい
- 倦怠感
- 筋けいれん
消化器系の副作用(食欲不振、吐き気、下痢など)が最も多く報告されています。これらは服用開始時や増量時に現れやすく、多くの場合は継続服用により軽減します。
重篤な副作用
ごくまれに、以下のような重篤な副作用が報告されています。
- QT延長、心室頻拍(Torsade de Pointesを含む)、心室細動
- 洞不全症候群、房室ブロック
- 消化性潰瘍、消化管出血
- 肝機能障害、黄疸
- 横紋筋融解症
- 悪性症候群
- けいれん
Atsuドネペジルの副作用で臨床上最も問題となりやすいのは、消化器症状と心臓への影響です。
消化器症状(食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢)は、アセチルコリンの作用増強に伴う消化管運動亢進や胃酸分泌促進などに起因するものであり、特に服用開始時や増量時に出現しやすい傾向があります。
添付文書に記載の国内臨床試験データでは、10mg群の消化器系副作用発現率は5mg群より高く、段階的な増量がこうした副作用の軽減につながることが示されています。
多くの場合、継続服用により症状は軽減しますが、著しい食欲低下や体重減少がみられた際は速やかに医師へ相談してください。
心臓への影響については、コリンエステラーゼ阻害に伴う迷走神経刺激作用により、徐脈やQT延長が生じる可能性が指摘されています。
洞不全症候群や房室ブロックなどの不整脈リスクもあるため、心疾患の既往がある方やQT延長を引き起こす薬剤(一部の抗不整脈薬、抗精神病薬など)を併用中の方は特に注意が必要です。
さらに、レビー小体型認知症では錐体外路症状(パーキンソン症状)が基礎にある場合が多く、ドネペジル投与後に症状の変動や悪化がみられるケースが報告されていることも念頭に置く必要があるでしょう。
認知症の方は自ら副作用を的確に訴えることが難しい場合があります。
介護者の方が日常的に食事量、体重、行動の変化を観察し、異変を感じた場合は早めに医療機関を受診されることをおすすめします。
アリセプトの他の薬との相互作用
抗コリン薬
抗コリン薬はドネペジルと薬理学的に拮抗するため、アリセプトの効果が減弱するおそれがあります。
- トリヘキシフェニジル(アーテン)、ビペリデン(アキネトン)など
コリン作動薬・コリンエステラーゼ阻害薬
同じコリン作動性の薬剤との併用により、コリン作動性の副作用(徐脈、消化器症状等)が増強されるおそれがあります。
- ベタネコール(ベサコリン)、ネオスチグミンなど
CYP3A4阻害薬・CYP2D6阻害薬
ドネペジルは主にCYP3A4およびCYP2D6で代謝されるため、これらの酵素を阻害する薬剤との併用によりドネペジルの血中濃度が上昇するおそれがあります。
- ケトコナゾール、イトラコナゾール(CYP3A4阻害)
- キニジン、フルオキセチン(CYP2D6阻害)
心拍数を低下させる薬剤
ドネペジルのコリン作動性による迷走神経刺激作用と相まって、徐脈のリスクが高まるおそれがあります。
- β遮断薬(ビソプロロール、カルベジロールなど)
- ジゴキシン
アリセプトの注意事項
- 初めてドネペジルを服用する方は10mgから開始しないでください(医師の指示のもと3mgから段階的に増量する必要があります)
- 自己判断で服用を中止しないでください(急な中止により症状が悪化するおそれがあります)
- 心疾患の既往がある方は、服用前に医師にご相談ください
- 消化性潰瘍の既往がある方は注意が必要です
- 気管支喘息や閉塞性肺疾患の方は慎重に使用してください
- 介護者の方は、服用者の食事量や体重の変化に注意を払ってください
- 高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所で保管してください
- こどもの手の届かない場所に保管してください
アリセプトのよくある質問
アリセプトは認知症を治す薬ですか?
アリセプトは認知症の根本的な治療薬ではなく、症状の進行を遅らせる対症療法薬です。
脳内のアセチルコリン濃度を高めることで認知機能の低下を遅らせますが、神経細胞の変性そのものを止めることはできません。早期から服用を開始することで、より長い期間にわたって認知機能を維持できる可能性があるとされています。
10mgから飲み始めても大丈夫ですか?
初めてドネペジルを服用する方が10mgから開始することは推奨されません。日本の添付文書では、1日1回3mgから開始し、1から2週間後に5mg、さらに4週間以上経過した後に10mgへ増量するとされています。
当サイトの取り扱いは10mg錠のみのため、すでに医師の指示のもとで低用量から開始し、10mgへの増量が決まっている方が対象となります。
飲み忘れた場合はどうすればよいですか?
飲み忘れに気づいた場合は、その日のうちであればできるだけ早く服用してください。
翌日に気づいた場合は、飲み忘れた分は服用せず、次の通常の服用時間に1回分を服用してください。2回分をまとめて服用することは避ける必要があります。
効果が出るまでどのくらいかかりますか?
認知機能への効果は個人差がありますが、一般的に服用開始後数週間から数か月で評価されます。
効果の判定には医師による定期的な認知機能評価が必要です。効果が感じられない場合でも自己判断で中止せず、必ず医師に相談してください。
他の認知症治療薬と併用できますか?
メマンチン(メマリー)との併用は可能です。メマンチンはNMDA受容体拮抗薬であり、ドネペジルとは異なる作用機序で認知機能に作用するため、併用による相加的な効果が期待できます。
ただし、他のコリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミン、ガランタミン)との併用はコリン作動性の副作用が増強されるため、原則として行いません。
アリセプトに関連する添付文書等の参考資料
アリセプトの有効成分(ドネペジル)に関する参考資料を以下に掲載します。