並木 幹夫医師2013年5月30日~6月2日の4日間にわたり、石川県金沢市で開催された第24回日本性機能学会学術総会は、日本性機能学会中部総会およびアジア太平洋学術総会も兼ねた大規模で国際的な学術総会となりました。今回、学会開催にあたって会長を務められた金沢大学大学院医学系研究科集学的治療学(泌尿器科学)教授の並木幹夫先生に、性機能学会やAPSSMでの学会を振り返ってのご感想などをインタビューさせていただきました。

今回の日本性機能学会学術総会は、中部総会およびアジア太平洋学術総会とも合同の大規模で国際的なものでしたが、いかがでしたでしょうか?

  第14回アジア太平洋性機能学会(14th APSSM)で多くのご発表をいただきたかったため、国内学会の日本性機能学会学術総会と日本性機能学会中部総会を合同開催とし、特別企画のみとさせていただきました。しかし、特別シンポジウム「日本における性機能研究の歴史と展望」をはじめ、その内容は素晴らしく、白井名誉理事長はじめ、ご発表いただいた先生方に大変感謝いたしております。
 14th APSSMには海外から200名、国内から273名のご参加をいただきました。そのうち招待者は113名でMaster lecture、Plenary lecture、 12の Symposiumなどで最新の知見をご発表いただき、学術的にもレベルの高いものとなりました。

今回、学会のテーマを“Inspire a young generation in APSSM”「APSSM(アジア太平洋性機能学会)における若い世代の鼓舞」とされた理由についてお聞かせください。

  APSSMは1987年に第1回学術大会を、東邦大学医学部泌尿器科白井將文名誉教授が主宰し香港で開催されました。その後、アジア・オセアニア地区で隔年開催され、年々着実に発展してきました。しかし、国際性機能学会(ISSM)の支部の中で最も多くの人口をかかえているAPSSMの学術活動に目を向けた時、旧知の皆様のご活躍に比し、若い世代の活躍がもの足りない印象がありました。特に日本の現状を憂慮したため、杞憂かもしれませんが、敢えてこのテーマにしました。

国内外の様々な研究成果が発表されたかと思いますが、特に今回印象に残った研究や、注目を集めた発表はありましたでしょうか?

  ISSM PresidentのMcMahon先生、APSSM PresidentのAhn先生、APSSM Honorary PresidentのAdaikan先生、UCSFのTom Lue先生など、世界の超一流の先生方の講演では最新の情報を分かりやすく解説していただき、どれもさすがと感心しました。
 また、スリランカ、バングラデシュ、ベトナム、ウズベキスタン、ロシアなどの新興国からの報告(Welcome to APSSM)は新たにAPSSMに加入していただく試みとして企画しましたが、早速バングラデシュからの入会申し込みがあるなど、APSSMの発展に貢献できたと思います。
 多くの参加者から注目を集めた発表テーマは、Stem cell、Premature ejaculation、Low-Intensity ESWTなどでした。

先進的な性機能医療が研究され発表される一方で、一般市民レベルの現実的な性機能医療の実情を考えますと、まだまだ研究成果が波及していない面もありそうですが、その辺りについてのお考えをお聞かせください。

 特に日本の場合、性機能研究が一般医療に波及していないと言えます。
 その一つの理由はパートナーである女性の性に関する関心が、諸外国と比べて低いことが考えられます。このため、この分野の研究・診療の発展を目的に「女性の性機能」をシンポジウムで取り上げました。
 また、日本では性機能診療を主に泌尿器科医が担当していますが、性機能は全身疾患の一症状と捉え、一般医家や内科医にも是非関心を持っていただくよう、働き掛けることが重要だと思います。

性機能で悩まれている日本人男性に対して、並木先生からお言葉をお願いします。

  日本では、性はタブー視されてきた歴史があるため、性機能低下に対する治療に消極的な方が多いと思います。性機能を改善させるPDE-5阻害薬や男性ホルモンが、全身的な有益な作用も有していることが最近注目されてきました。ですので、性機能は健康のバロメーターであり、積極的に改善することの有用性を、患者さんのみならず、一般医家の方も理解していただけると、これからの高齢化社会も活性化されると考えます。

並木先生、ご協力ありがとうございました。

並木 幹夫医師

この記事の執筆者 並木 幹夫

所属
金沢大学附属病院
肩書
泌尿器科学教授