ED(勃起不全)とは、男性器が勃起しない、または勃起状態を維持することができず満足に性行為が行えない状態を指します。「勃起不全」「勃起機能障害」「勃起障害」とも呼ばれ、Erectile(勃起)Dysfunction(障害)の略として国際的に使われている医学用語です。
この記事では、EDの症状・原因となる種類・主な治療法など、EDに関する基礎知識をわかりやすく解説します。
EDの症状
EDの症状はさまざまで、満足のいく性行為が行えないこと全般を指します。症状の程度は大きく3つのパターンに分けられています。
| 分類 | 症状の程度 |
|---|---|
| 軽症 | たまに勃起できない |
| 中等度 | 勃起が十分でなく、時々性交ができない |
| 完全型 | 勃起しないため常に性交できない |
「完全に勃起しない」状態だけがEDではありません。若い頃よりも持続時間が短くなった、性行為の途中で勃起しなくなった、普段は大丈夫だがたまに勃起しないといった症状もすべてEDに該当します。
このようにさまざまな症状が当てはまるEDですが、ナーバスな問題であるためあまりオープンにはなっていません。しかし現在、日本の潜在的なED患者数は1,130万人に上るともいわれています。EDは特別なものではなく、非常に身近な症状なのです。
EDの原因と種類
EDの原因は大きく3つの種類に分けられます。それぞれメカニズムが異なるため、適切な治療法も変わってきます。
心因性ED
ストレスや精神的な負担・焦りが原因でEDを発症するもので、原因とされる種類の中で最も多いタイプです。身体的には異常がないのに発症するのが特徴です。
心因性EDの原因となるものには以下のようなケースがあります。
- 仕事のストレスや経済的なプレッシャー
- 過去の性行為に対するトラウマ
- 夫婦間の問題や子作りへのプレッシャー
- 過度の緊張や性病に対する恐怖
- 幼少期のトラウマや強いマザーコンプレックス
心因性EDはカウンセリングや心理療法と併用してED治療薬を服用することで、改善が期待できます。性行為に対する成功体験を積み重ねることが重要とされています。
器質性ED
勃起をするためには「刺激を脳へ → 脳から勃起命令 → 命令が神経を伝わる → 血液が男性器へ」という流れがあります。脊髄を損傷するような大怪我をしたり、血液がうまく流れなかったり、手術で神経に後遺症を負ったりすると、この流れが途中で途切れてしまいEDを発症します。
器質性EDは血管や神経の物理的な損傷が原因であるため、原因に応じた治療が必要となります。加齢に伴う動脈硬化も血管性EDの要因の一つであり、50代以降で増加する傾向にあります。
器質性EDの代表的な要因としては、前立腺がんや膀胱がんの手術後の神経損傷、交通事故などによる脊髄損傷、動脈硬化による血流の低下などが挙げられます。
症候性ED
器質性EDと似ている部分がありますが、手術や大怪我のように突発的・一時的な要因で起こるものではなく、慢性疾患が原因で発症するEDです。
症候性EDの主な原因としては以下のものがあります。
- 高血圧症:血管への負担が血流障害を引き起こす
- 糖尿病:神経障害や血管障害がEDの原因となる
- 慢性アルコール中毒:神経系への影響が勃起機能を低下させる
- 長期的な薬の服用:降圧剤や抗うつ薬などの副作用
生活習慣病を適切に管理することがEDの予防にもつながります。症候性EDの場合は原因となる疾患の治療と並行してED治療を進めることが重要です。
EDの主な治療法
ED治療の主流はED治療薬の服用です。現在、日本で承認されているED治療薬は主に3種類あります。
| 治療薬 | 特徴 |
|---|---|
| バイアグラ | 世界初のED治療薬。服用後30分〜1時間で効果が現れ、約4〜5時間持続 |
| レビトラ | 即効性が高く、服用後約15〜30分で効果発現。約5〜10時間持続 |
| シアリス | 最長36時間と持続時間が長い。食事の影響を受けにくい |
それぞれに特性があり効能もさまざまですが、狭心症や心筋梗塞の治療で硝酸薬を使用している場合はED治療薬との併用が禁止されていますので注意が必要です。自分の症状を伝えるのが恥ずかしいなどと尻込みせず、きちんと医師と相談し自分に合う薬を処方してもらうことが大切です。
最近では予約の際に症状をメールに書くことで、直接自分の口から言いにくい方に対応している病院もあります。まずは専門の医療機関を探し、予約をしてみましょう。
ED治療薬以外の治療法
ED治療薬が使用できない方や効果が得られなかった方には、以下のような治療法も選択肢となります。
- ICI療法(陰茎海綿体注射療法):海綿体に薬剤を直接注射して勃起を促す治療法
- 低衝撃波治療(ED1000・ED-MAX・RENOVA):衝撃波で血管新生を促しEDを根本から改善する治療
- VCD式カンキ(陰圧式勃起補助具):薬を使わずに陰圧で勃起を促す医療機器
- 幹細胞治療:再生医療を応用した最先端のED治療
治療法の選択は個人の症状や体質、持病などによって異なります。まずは専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけることが改善への第一歩です。
EDの年代別傾向
EDは高齢者だけの悩みではありません。20代・30代の若い世代でも心因性EDを発症するケースは珍しくないのが現状です。年代によってEDの主な原因は異なる傾向があります。
| 年代 | 主な原因 |
|---|---|
| 20〜30代 | 仕事のストレス・緊張・過去のトラウマなど心因性が中心 |
| 40〜50代 | 心因性に加え、生活習慣病(高血圧・糖尿病)による血管性EDが増加 |
| 60代以上 | 加齢に伴う動脈硬化や神経障害による器質性EDが中心 |
40代以降になると心因性と器質性の両方が原因となる「混合型ED」も増えてきます。加齢による身体的な変化に精神的なプレッシャーが重なることで、より複雑な原因となるケースも少なくありません。
いずれの年代でも早期に適切な治療を受けることで改善が見込めるため、「年齢のせいだから仕方ない」とあきらめる必要はないのです。
ED治療を受ける際のポイント
ED治療を受けるにあたって、事前に知っておくと安心なポイントをまとめました。
- 保険適用について:ED治療は基本的に自由診療(保険適用外)となります。ただし2022年4月より、不妊治療の一環としてのED治療薬処方は条件付きで保険適用となりました
- 初診の流れ:問診票の記入 → 医師との相談 → 処方の3ステップが一般的。多くのクリニックでは血液検査や触診は必要ありません
- 費用の目安:初診料は無料〜3,000円程度、ED治療薬は1錠あたり1,000〜2,000円程度が相場です
- オンライン診療:最近ではスマートフォンを使ったオンライン診療に対応しているクリニックも増えており、自宅から診察を受けることも可能になっています
対面での診察に抵抗がある方は、まずオンライン診療を利用してみるのも一つの方法です。
EDは恥ずかしい病気ではありません
EDは日本だけでも1,130万人もの方が悩んでいるとされる非常に身近な症状です。加齢だけでなく、ストレスや生活習慣、持病などさまざまな要因で発症するため、年齢に関係なく誰にでも起こりうるものです。
医師はED治療の専門家ですので、何も恥ずかしがることはありません。適切な治療を受ければ改善が見込めるケースが多いため、一人で悩まず早めに医療機関を受診することをおすすめします。
EDの治療はパートナーとの関係改善や自信の回復にもつながります。生活の質(QOL)を向上させるためにも、まずは気軽に専門医へ相談してみましょう。